前回はさ行、た行のカスタマイズで力尽きたが、今回は促音、拗音を中心に説明していく。
と、その前に。
このカスタマイズを施した Google 日本語入力用ローマ字設定を、
https://github.com/matsui-goga/ro-mazhi
に置いておいたので、気になる人は実際にインポートしてみてもらうことができる。
多分ことえり用のファイルとかも用意できるので、需要がありそうなら同じリポジトリに放り込むつもり。
さて、では今日はまず促音から始めよう。 促音とは「っ」のことである。 標準的な文章の表記では文末に立つことがないので、世のローマ字表記では同一子音を重ねることで表現される。 しかし、ローマ字入力では必ずしも文を前から後ろに順に書くばかりではないので、それだけを入力する方法も用意されている。 代表的なのは xtu や ltu といった「小さくする接頭辞」+「つ」の組合せである。 が、ここでは思い切って x 一文字を促音に割り当てる。 昔話をすると、もともとは q と書くつもりだった(日本語の音素として /Q/ と表すことがあるので)が、 その当時カスタマイズを試みた uim か何かで q を別のコントロールに取られてしまったからやむなく x に割り当てた記憶がある。 今はもう x で慣れてしまったので、変えるつもりはない。 話の逸れついでに、xa で「ぁ」を出すなど小さい字全般に x を接頭辞に使っている場合も多いかと思うが、l も同じ意味の接頭辞に大体割り当てられているので、そちらに統一することをお勧めしておく。
次は拗音。 拗音は「きゃ」とか「みゅ」などの小さいや行の表記のことである。 拗音はや行と同じ y に割り当てて例えば kya で「きゃ」を表すのが通常なのだが、難点が一つだけあって、nya が「にゃ」になって「んや」のためには nnya のように打つ必要が出てくるところである。 それぐらいしか理由はないのだが、y はや行専用にして、拗音は j で表す(発音記号で [j] に当たる(ことが多い)からという理由)。 つまり kja で「きゃ」を nja で「にゃ」を mja で「みゃ」を rja で「りゃ」を表す。 ちなみに「ゃ」などの拗音単独の表記も ja だけでできるようにしておけば打ち間違いの訂正等で lya より簡単。 ところで通常さ行の拗音と認識される「しゃ」の音には別の綴りを既に割り当てたので、sja は「しゃ」ではない。 発音の原則から言うと sj は [sj] の音、つまり「すゃ すゅ すょ」に割り当てることになる。 まあ、さ行はこんな表記を使う機会もほぼ無いのだが、た行には多少意味がある。 「ちゃ」に tsha (あるいは cha)を割り当てたから tja は別の音「てゃ」に変換される。 用例としては tju を使う「テューリンゲン」とか、 濁音の dju に「デュオ」「デュトワ」「デュワー瓶」など。 さらに tsja で「つゃ」とするが用例は tsju を使った「ツュンベリー」ぐらいか。
以上だいたい発音に忠実な(促音や撥音は音声より音素を表すし、や行と拗音は敢えて表記を分けたが)ローマ字のカスタマイズを紹介してみた。 下の表にまとめておく。
おまけ: このカスタマイズで打鍵数が増えることに批判的だったりするだろうか? そういう向きには「子音に挟まれた u を省略する」という規則の導入を提案しよう。 (実際に自分でも一部実施しているのだが、それほど徹底的にやりこんだことはない) たとえば「オブジェクト」という語は今までの説明に従えば obuzhekuto (10打鍵)だが、 u の省略を行えば obzhekto (8打鍵)になり、ヘボン式の obujekuto (9打鍵)より短い。
あ | a あ | i い | u う | e え | o お | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
か | ka か | ki き | ku く | ke け | ko こ | kja きゃ | kju きゅ | kjo きょ | |
が | ga が | gi ぎ | gu ぐ | ge げ | go ご | gja ぎゃ | gju ぎゅ | gjo ぎょ | |
さ | sa さ | si すぃ | su す | se せ | so そ | sja すゃ | sju すゅ | sjo すょ | |
ざ | za ざ | zi ずぃ | zu ず | ze ぜ | zo ぞ | zja ずゃ | zju ずゅ | zjo ずょ | |
しゃ | sha しゃ | shi し | shu しゅ | she しぇ | sho しょ | ||||
じゃ | zha じゃ | zhi じ | zhu じゅ | zhe じぇ | zho じょ | ||||
た | ta た | ti てぃ | tu とぅ | te て | to と | tja てゃ | tju てゅ | tjo てょ | |
だ | da だ | di でぃ | du どぅ | de で | do ど | dja でゃ | dju でゅ | djo でょ | |
つぁ | tsa つぁ | tsi つぃ | tsu つ | tse つぇ | tso つぉ | tsja つょ | tsju つゅ | tsjo つょ | |
づぁ | dza づぁ | dzi づぃ | dzu づ | dze づぇ | dzo づぉ | dzja づゃ | dzju づゅ | dzjo づょ | |
ちゃ | tsha ちゃ | tshi ち | tshu ちゅ | tshe ちぇ | tsho ちょ | ||||
(cha) | (chi) | (chu) | (che) | (cho) | |||||
ぢゃ | dzha ぢゃ | dzhi ぢ | dzhu ぢゅ | dzhe ぢぇ | dzho ぢょ | ||||
な | na な | ni に | nu ぬ | ne ね | no の | nja にゃ | nju にゅ | njo にょ | |
は | ha は | hi ひ | hu ふ | he へ | ho ほ | hja ひゃ | hju ひゅ | hjo ひょ | |
ぱ | pa ぱ | pi ぴ | pu ぷ | pe ぺ | po ぽ | pja ぴゃ | pju ぴゅ | pjo ぴょ | |
ば | ba ば | bi び | bu ぶ | be べ | bo ぼ | bja びゃ | bju びゅ | bjo びょ | |
ふぁ | fa ふぁ | fi ふぃ | fu ふ | fe ふぇ | fo ふぉ | fja ふゃ | fju ふゅ | fjo ふょ | |
ヴぁ | va ヴぁ | vi ヴぃ | vu ヴ | ve ヴぇ | vo ヴぉ | vja ヴゃ | vju ヴゅ | vjo ヴょ | |
ま | ma ま | mi み | mu む | me め | mo も | mja みゃ | mju みゅ | mjo みょ | |
や | ya や | yu ゆ | ye いぇ | yo よ | |||||
ら | ra ら | ri り | ru る | re れ | ro ろ | rja りゃ | rju りゅ | rjo りょ | |
わ | wa わ | wi うぃ | we うぇ | wo を | |||||
(その他) | x っ | n ん | - ー | la ぁ | ja ゃ |